凝固剤

●凝固剤の種類

一般に販売されているゲル化剤には「寒天」「カラギーナン」「ゼラチン」「ペクチン」等があります。以下、その特性や使用方法等を説明していきたいと思います。

●寒天

粉末寒天(左) 角寒天(右)
『寒天』は海藻から抽出した凝固剤で、形状としては角寒天・糸寒天・粉末寒天があります。
3つの中では角寒天が一番純度が高いとされています。角・糸寒天はたっぷりの冷水に半日くらいつけて繊維をやわらかくして使います。時間のないときは少しぬるめの水で2~3時間ほど戻しましょう。
粉末寒天は水で戻す必要がなく、そのまま液体に溶かして沸騰させて使います。角・糸寒天は煮溶かす際、砂糖の入った液に加えると溶け残りが出てしまうので、まず砂糖を入れていない液に溶かしてから後で砂糖を加えます。
粉末寒天は砂糖と一緒でも溶けるように改良されているので、家庭で使うには便利ですね。
ちなみに寒天はゼラチンと異なり、ふやかしすぎて水に溶けてしまうということはありません。寒天は1gで約120~150倍の水分を固めることができます。常温でも凝固した状態が続き、熱にも強いです。逆に酸には弱く、水の代わりに柑橘系や酸の強いジュースを使う場合、酸と寒天をはじめからあわせて寒天液を作ると凝固力が弱まってしまいます。その場合、寒天液の温度を60~70℃位まで下げてからジュースを加えれば問題ありません。
また寒天は、砂糖を入れることにより透明度が増します。ある程度の糖分がないと、離水しやすくなります。
用途としては、あんみつの寒天や水ようかん、フルーツかん等で、野菜・果物によく合います。また東北地方で食べられている、野菜サラダをダシのきいた寒天液で固めた「サラダ寒天」なども面白いですね。実はお寿司屋さんがよくシャリに加えているのです。つや出しと保水性のためですね。

●カラギーナン

『カラギーナン』赤い海藻(スギノリ・ツノマタ)を原料とする凝固剤です。
使い方としては、粉末寒天と同様に水でふやかす必要はなく、水分を加えて加熱して溶かします。とても微細な粉末なので、砂糖とよく混ぜ合わせてから液体に加えていきます。
また、寒天は沸騰させて溶かすのに対し、このカラギーナンは、80~85℃で溶けます。フルーツなどの酸にも強いので、ゼリーなどに幅広く使われます。ただ、レモンのように酸が強すぎるものと合わせるとゲル化が壊れてしまいますので注意しましょう。
カラギーナンは1gで約40倍の水分を固めることが出来ます。また糖分が多いとゲル化力が強まります。
食感は、水分をかなり抱き込むので、口の中でやわらかく溶けていくような喉ごしの良さが特徴的です。ただ、溶液全てを80℃まで加熱する必要があり、ゲル化を一度崩すと元に戻らないため、温度管理に注意が必要です。

●ゼラチン

粉ゼラチン(左) 板ゼラチン(右)
『ゼラチン』動物の皮(特に豚)を原料とする凝固剤です。形状は板状のものと粉末状の2タイプがあります。昔は板ゼラチンの方が純度が高いと言われていましたが、現在はほぼ同じです。また、同じ分量を使ってもメーカーによって微妙に固さが異なるので注意しましょう。
使い方は冷水でふやかして使います。板ゼラチンの場合は、均一に水分を吸収するようにできるだけ厚さがそろっているものを選びましょう。冷水がたっぷり入ったボールなどにそのまま浸して約15~20分置くと、4~5倍の水分を吸収します。それをぎゅっと絞って水分を切り、40~50℃の液に加えて溶かして使います。板ゼラチンはふやかす時間が長すぎるとそのぶん水分を吸収してしまいゲル化が弱まってしまうので、ふやかしすぎには気をつけましょう。一番わかりやすいのははじめから5倍量の冷水を計量し、その中に細かくカットした板ゼラチンをくわえてふやかす方法です。吸収しきらなかった水も一緒に液に加えることで、いつも一定の固さを保つことが出来ます。粉ゼラチンの場合は5倍量の冷水に振り入れてふやかして使います。温かいお湯に振り入れるとゼラチンの表面が溶けてしまい、中まで水分が入っていかないため充分に水分を吸収してくれません。最近は冷水でふやかさなくても加熱した液にそのまま振り入れてまぜればゲル化するという便利なものもあります。
ゼラチンは酸やクリームなどの油系に強く、逆にタンパク質分解酵素をもつパイナップルやパパイヤなどには弱く、特に生のものは凝固力が弱まるので避けましょう。またゼラチンは20℃以下で固まり始めます。口の中で溶ける温度なので、口溶けが良くやわらかな食感が特長です。ゼラチンの凝固力は寒天の1/5になります。用途としてはゼリーやムースが一般的です。また、マシュマロには乾燥を防ぐためにゼラチンを加えています。

●ペクチン

『ペクチン』果物(りんごや柑橘系の皮)を原料とした天然の高分子多糖類です。種類としては、糖度やpHに関係なくカルシウムやマグネシウムなどの金属イオンでゲル化するLMペクチンと、一定の糖分と酸によってゲル化するHMペクチンがあります。最近よくお店で見かけるパートドフリュイはこのHMペクチンを使用しています。高い温度でゲル化し始めます。ペクチンは微粉末なのでそのまま加えるとダマになりやすく溶けにくいので、砂糖の一部と混ぜあわせ、置いてから使用します。
また、専門性や機能性にすぐれた凝固剤も登場しています。ムース専用の凝固剤は、やさしくやわらかく固まるのが特長で、空気を抱きこむ力があります。市販のムースミックスなどに入っていることが多く、フルーツピューレなどに直接混ぜて使うことができ、50℃以上で溶解します。冷解凍しても離水しにくく、ゼラチンに比べて口溶けもなめらかです。